蔵元見学のススメ 蔵元見学 蔵元見学募集
蔵元へ行こう!普段は見ることがない酒蔵をご案内
蔵見学@頚城酒造
寒造り真っ只中の新潟県上越市柿崎区にある頚城(くびき)酒造さんへお邪魔してきました。
まさか!酒店で販売するお酒のほとんどは、この頚城酒造さんでお願いしております。

ちなみに、代表銘柄は久比岐(くびき)、越路乃紅梅(こしじのこうばい)。そして昨年2012年秋よりこだわりの八恵 久比岐(はっけいくびき)を製造している蔵元です。

この日は丁度風が強く、雪が吹き荒れたとても寒い日でした。軒先のつららも伸びていますね。
さて、「寒造り」と言われますが、なぜ新潟ではこの時期に酒造りが盛んに行われるかというと冷蔵庫の中にずっといるような寒さが続くことが酒造りにおいては好条件だからです。

お酒を造る工程で重要な醗酵(はっこう)においては一定の低温状態が必要とされ、醗酵途中の温度管理の観点からも冬の気候がまさに最適な環境であると言えます。

空調管理が行える近代的な蔵元では四季を通じて日本酒造りを行うことも出来ますが、やはり冬の酒造りが盛んに行われているのは上記の理由があるのだと思います。

また、新潟に降る雪は住む人間にとってはやっかいな存在ではありますが、空気中のチリや微粒子を包み込み、空気がクリーンな状態になると言われており、醸造中の衛生面からも冬の厳しい寒さと降り続く雪はメリットがあるそうです。

蔵見学@頚城酒造

頚城酒造での朝の仕事は7時過ぎから始まり、まずは前日に洗米(せんまい)というお米の洗う作業を終えた酒米(さかまい)を甑(こしき)と呼ばれる巨大な蒸し器にその酒米を入れる作業から入ります。

酒米がベルトコンベアで甑に入れられます。

実はこの甑に入れるお米は一種類だけでなく、仕込みの作業工程によって使用する異なる酒米を順番に入れていくそうです。

甑の中の酒米は布で仕切られ、異なる精米歩合の酒米が入ります。

巨大な蒸し器がある場所は釜場(かまば)と言われ、その作業を行う蔵人の責任者を釜屋(かまや)と呼びます。

歴史を感じさせる釜場の梁が印象的でした。

酒米は使用する用途によって削るパーセンテージが異なり、玄米を100%とし、磨いた(削った)後の状態のパーセンテージを精米歩合(せいまいぶあい)と言います。
ご飯のお米は、およそ92~90%の精米歩合ですが、酒米はさらに磨きます。
日本酒全体として全国平均は66%位ですが、新潟の蔵元全体の平均で59%位と全国平均よりさらにお米を磨きます。
ちなみに平均値だけで言えば、60%の精米歩合で吟醸酒の規格になりますので新潟の日本酒はかなり贅沢であるとも言えます。

磨けば磨くほど良いとは一概に言えないのですが、酒米を磨き、より中心部分のお米を使うとお酒がすっきりとした味わいになると言われ、大吟醸クラスでは30%以下の精米歩合となるお酒もあります。
つまり、パーセンテージが低くなるにつれ米粒単体の重量は減り、60%と30%の精米歩合のお酒を比べたら30%の方がよりお米(粒)をたくさん使うので単純に酒米の玄米の重量(数)のコストが価格に反映される=大吟醸は高いということになります。

厳密にいうと酒米の種類の違いにより、お米自体の価格も異なるのであくまでイメージとして考えてみてください。

酒米を張込む(入れる)作業が終わると蒸す作業が始まります。
酒造りでは酒米を炊くのではなく、蒸します。なぜかというと炊いたお米の水分量より蒸したお米の水分量の方が少なく、その水分量がこの後の工程である麹造りに適しているからだそうです。
また、酒米を蒸すことにより殺菌の意味もあるそうです。

酒米を蒸す作業と並行して他の蔵人はそれぞれの持ち場の仕事の準備を行います。

蔵人が蔵の中を行き交い、特に指示があるわけでもなく、仕込みの段取りを黙々と進めていたのが印象的でした。

その段取り中の仕事の一つである醗酵途中の醪(もろみ)の分析を行う仕事に注目してみました。

毎日分析のためにタンクの中の醪から一部を取り出します。
醗酵途中の醪はドロドロ状態なので、その醪をろ紙でろ過し、醗酵中の酒を抽出します。
午後からその酒を分析し、アルコールの生成具合やその他の数値を管理します。

杜氏さんのお話では、その昔は分析を行わない杜氏さんもいたそうですが、今は行うところがほとんどだそうです。
数値は酒造りが順調に行われているかの大事な指標であり、日々のデータの蓄積は蔵の大事な資産であるとも言えます。

さて、9時過ぎになると釜場では蒸米がそろそろ完成する頃です。

甑の上部に張られた布が取られると釜場は真っ白な蒸気で包まれ、蒸された酒米の甘いような良い香りがします。
その後、甑から専用のスコップを使い放冷機(ほうれいき)と呼ばれる蒸したお米を冷ます機械に移します。

放冷機では連続して蒸した酒米を均一に広げ、空気に触れさせ冷まします。

杜氏さんが蒸米の状態を確認しています。

蒸米は外硬内軟(がいこうないなん)が良いとされ外はパラパラ、中はしっとりが酒造りの理想的な硬さです。
場合によっては「ひねり餅」と呼ばれる出来たての蒸米を素手でひねりつぶして状態を確認します。

放冷機を通った蒸米は仕込みの場所に応じてエアシューターで送られます。まずは麹室(こうじむろ)へ、麹造りの一番最初であるこの作業を「引き込み」と言います。
麹室では蔵人がエアシューターで送られてきた蒸米はさばきます。
その後、蒸米を積み上げ、布をかけて均一の温度と水分になるようします。

ちなみに麹室は調湿効果のある木製の壁や天井で覆われ、温度は30~40度の麹菌が活動しやすい環境になっています。

続いて蒸米が送られたのは仕込み中のタンクです。

同じくエアシューターで蒸米が送られ、櫂棒(かいぼう)と呼ばれる撹拌(かくはん)用の道具で混ぜます。
氷を予め入れているのは、蒸米が入ることによりタンク内の醪の温度が上昇しないよう調整するためだそうです。

この作業は櫂入れ(かいいれ)と言われ、地味ですが、蒸米が入ってくると次第に櫂棒が重くなり、結構しんどい力仕事です。

タンク上部が空気に触れる余地がある開放醗酵であることも日本酒造りの特徴の一つです。
他の醸造酒の仲間であるビールやワインはタンクを開放していません。

この日の午前はこの他に通称「ヤブタ」と呼ばれる醗酵を終えた醪からお酒を搾る自動圧搾機から酒粕を取り出す作業

なんで「ヤブタ」と言うかというと、薮田式自動醪圧機という薮田産業株式会社さんの機械だからです。
http://www.yabuta.co.jp/seihin_set.html

一般の方がこの事実を知ると、みなさん結構驚かれます。
私も最初「矢蓋」とか言う昔からの酒造りの器具の名称だと思っていましたから

取り出した酒粕。通称:板粕(いたがす)発酵食品として近年見直されていますね。
ただ、粕はお酒を搾らなければできませんので、日本酒の消費安定が酒粕の安定供給となります。

それから重要な工程である酒母(しゅぼ)と呼ばれる本格的な醪を作る前の段階で小さく仕込んだ醪を造る作業が行われていました。

まずは小さく仕込んで酵母の働きを強くし、その後大きく醪を仕込むのが日本酒造りの特徴です。
醸造過程を安全に進めるためでもあり、糖化と醗酵が同じタンク内で同時進行する世界的にも珍しいお酒の造り方です。

これを並行複醗酵(へいこうふくはっこう)と言い、同じ醸造酒の仲間であるビールなどは糖化と醗酵の工程が分かれていてます。この並行複醗酵により蒸留酒(ウィスキーや焼酎)並みの約20%のアルコール度数のお酒が出来上がります。

他の醸造酒ではここまでアルコール度数が高くできません。
つまり、日本酒の醸造技術は世界的に見てもかなり優れたものであるということで、本当は声を大にして言いたいくらいすごいことなのですが、酒類全般においても製造工程は上記の通り複雑なので意外と知られていないのです。

そして、麹室ではすでに麹造りの最後の作業である、出麹(でこうじ)が行われていました。

麹と麹がくっついた状態をほぐします。

ほのかに栗のような香りが漂い、麹が完成間近であることが分かります。

塩麹のブレイクにより皆さんの周りでも麹を見かけることがあると思いますが酒造りではこの麹造りがとても大事な作業です。

麹が果たす役目は酒造りの中でも特に重要で、麹が作り出すアミラーゼという酵素によって酒米のでんぷん質を糖に分解し(糖化)、その糖で酵母菌が醗酵を行い、アルコールが生成されます。

つまり酒米を醗酵させるためには、麹がなくてはならない存在で、その麹がきちんと役目を果たさなければ、以後の工程がうまく進まなくなります。
麹造りを丁寧に行う蔵元のお酒は美味しいと思ってもよいくらい注目する箇所でもあります。
ほぐされた麹は麹室から出され所定の場所にて冷やし、乾燥され、麹菌の繁殖が止められます。

さて、午前の取材はここまで、また午後からお邪魔することにしました。

午後1時からは午前中に麹室に引き込みをした蒸米に麹菌を付ける重要な作業が行われました。
麹菌は通称:もやしとも言われ

パッケージにも「もやし」って入ってますね。
その後、麹菌を蒸米に振り掛ける作業が行われます。

麹菌を振り掛けた後は蒸米に麹が落ち着くのを待って、混ぜ込む作業が行われます。

 

麹造りはおよそ48時間、気の抜けない作業がこの後も続きます。

ちなみにこの麹が完成すると午前中に行った出麹となり、室から出されるという流れになります。

という感じで
一日の蔵の仕事の流れを一通りを見させて頂きました。

現在造っているお酒は搾った後、タンクで熟成され、秋頃には製品として登場予定です。
八木社長にはずっとついて説明して頂いたので、お忙しい中、ホント感謝申し上げます。

次の機会には、醗酵中のタンクの模様をじっくり見させて頂きたいなと思っております。
およそ1か月かかる醗酵は、タンクの中でも変化が見れますので、それを皆さんにお伝えできればと思います。
また、来年の寒造り時期には少人数の受付となりそうですが、蔵見学ツアーも企画できればと考えていますのでお楽しみに。

酒を売る側としても一年に一度は蔵に足を運び、実際に見ることは大切でした。
今年もいいお酒が出来ることを祈っています。